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勉強会の予定・記録

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2009-07-31

第113回 カレントアウェアネスポータルの裏側

21:43 | はてなブックマーク - 第113回 カレントアウェアネスポータルの裏側 - 勉強会の予定・記録

日時

2009年7月31日(金) 19:15-21:30

会場

京都大学附属図書館4階 スタッフラウンジ

発表者

上山卓也 (京都大学文学研究科図書館)

参加者

林,野間口,長坂,安原,古賀先生,長谷川,江上,岡本,塩野,宮嶋,渡邉,天野,堀部,北條,西川,井上

資料

  • レジュメ


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参加者からの感想: 林 豊

企画の意図

海外ソースからの情報収集が弱いなぁという個人的な動機が元になっている.

思い返してみるときっかけは学術系ブロガーが巡回している海外ブログを知りたい - 図書館情報学を学ぶと,それに続く海外ブログ続報 - 図書館情報学を学ぶというエントリだった気がする.僕は図書館情報学プロパーでないので図書館情報学系の学生/研究者がどんなサイトやジャーナルを愛読しているのかに興味がある.そもそもまわりのスタッフが普段どうやって情報収集をしているかもよく知らなかったので,そのノウハウを募って共有できたら面白いんじゃないかと思うようになった.(結局,あれやこれやで企画としてはそこまで行かなかったのだが.)

情報収集というとまっさきにカレントアウェアネスポータルが頭に浮かぶ.カレントアウェアネスポータルは国立国会図書館関西館図書館協力課調査情報係が運営しているサイトだが,そこには筑木一郎さん(2003~),今回の発表者である上山卓也さん(2006~),北條風行さん(2009~)と京都大学の職員が出向している.このコネクションを生かさない手はないということで,上山さんが出向から戻ってきたタイミングで企画を持ちかけた.こころよく引き受けていただいた上山さんには感謝.

カレントの中の人

国立国会図書館関西館図書館協力課調査情報係は係長1名,係員2名,非常勤2名という体制.加えて研究者1名が非常勤調査員として加わっているそうだ.

3名という少人数でこれだけのメディアを抱えていると激務なのは間違いない.上山さんはカレントアウェアネスも担当していたころ(2006.10~2008.6) は1ヶ月くらいカレントアウェアネス-Rに記事が書けなかったこともあるそうだ.

各メディアの特徴

サイト上部のタブを見れば分かるように,カレントアウェアネスポータルではいくつかのメディアを発行している.そのひとつひとつについて裏話を明かしてもらったが,発行頻度や編集体制といった特徴が異なっていて面白かった.

何よりカレントアウェアネス-Rは事前チェックもなく担当者の裁量で非常に自由に運営されているということに驚く.すごいな.NDLという国の大組織でどうやってこんな状況が成立したんだろう?

  • カレントアウェアネス-R:
    • 位置づけ: ブログ形式のニュース
    • 発行頻度: 毎営業日 (ノルマなし.自宅で情報収集・原稿執筆することも)
    • 執筆: 調査情報係
    • 企画: ネタの擦り合わせは行わずそれぞれが独自に調査執筆しているため他の2人と被ってしまうこともある
    • 編集: 投稿記事の事前チェックはしない
    • ネタ元: 一部としてLibrary Journal, American Libraries, LIS News, Resource Shelf, Digital Koans, Law Librarian Blogを紹介.上山さんのGoogle Readerには300ほどのフィードがusa_a, usa_bのように地域 x 重要度でフォルダ分けされていた.はてなアンテナも併用
  • カレントアウェアネス-E:
    • 位置づけ: 解説つきニュース (メールマガジン配信後,ポータル掲載)
    • 発行頻度: 月2回
    • 執筆: 調査情報係,NDL内,外部執筆者 (今年度は佐藤翔さんも参加)
    • 企画: 係3名 + 非常勤調査員で週1回記事選定
    • 編集: CA-Rとは違って係員,非常勤調査員,課長のチェックが入.
    • ネタ元: CA-Rなど.各号のなかでネタをばらけさせるように心がける.中国・韓国のニュースを多く取り上げるなど
  • カレントアウェアネス
    • 位置づけ: 雑誌 (解説記事,動向レビュー,文献レビュー)
    • 発行頻度: 年4回
    • 執筆: 館内外の研究者・実務担当者
    • 企画: 編集企画員(外部有識者.京大図書館出身の呑海沙織さんも参加)と編集協力員 (NDL)で年4回記事選定のための会議を実施
    • 編集: 係でゲラチェック(Word)など.CA288~CA295はIn Designを使って係内で組版をしたという話に反応
    • ネタ元: CA-R, CA-Eなど
    • 発行4~5ヶ月前に執筆依頼,2ヶ月前に締切,校正,1~2週間前に校了というスケジュール
  • 調査研究事業 (図書館調査研究リポート,図書館研究シリーズ)
    • 位置づけ: 研究報告書
    • 発行頻度: 年1回 (毎年1, 2テーマ)
    • 外部コンサルタント業者に調査を依頼
    • 2008年度は初の試みとして調査研究報告会を行った http://current.ndl.go.jp/FY2008_research

話を聞いていて,記事執筆を依頼しても断られたり,当人が良くても上司の理解が得られなかったりして苦労するんじゃないかと思った.しかしNDLではカレントアウェアネスというものに対する理解があって断られることはほとんどないとのことだった.というのもカレントアウェアネスは今年で30周年http://current.ndl.go.jp/ca_no300_historyで,カレントアウェアネスが始まった当時に若手だった人たちが現在は館内の管理職層を構成しているという理由もあるのではと.

XOOPS → Drupal

カレントアウェアネスポータルの管理画面を見せてもらえたのも貴重な体験だった.

カレントアウェアネスポータルは当初XOOPSというCMSを使っていたが (上田貴雪,村上 浩介,筑木 一郎, "図書館の「いま」をどのように伝えるか—国立国会図書館の「Current Awareness Portal」の試み", http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.49.236 に詳しい.),2008年3月にXOOPSからDrupalに切り替えた.当時のURL をめぐるばたばたは記憶に新しい.

現在XOOPSでサイトを運営している身としては他のCMSに乗り換えた理由と,Drupalを選択した理由が気になる.質問してみると,XOOPSのセキュリティバグが改善されなかった点や,Drupalの開発コミュニティに図書館が参加している点などを挙げてくれた.セキュリティに関して,Drupalの管理画面では「モジュールのアップデートが必要です」といった情報を表示してくれるのが親切だなと思った.また,URLエイリアス機能もXOOPSにはなかった点だと言う.(カレントアウェアネス-Eの各記事には http://current.ndl.go.jp/e574 といった記事IDに基づくURLが振られている.ただし,XOOPSのpicoモジュールには仮想パスという同等の機能があったりする.)

中の人を支えるモチベーション

カレントアウェアネス-Rのクオリティが担当者の熱意に大きく左右されているというのは外から見ていても想像できる.そこで気になるのは彼らを支えるモチベーションだった.

まず,カレントアウェアネスポータルの記事に対するクレームやレスポンスは「あまりない」,「たまにメールで」だそうだ.

Drupalの管理画面では,はてブを始めとするSBMサービスで各記事がどれくらいブックマークされているか分かるようになっている.このブックマーク件数やコメントを見ることが担当者のモチベーションになっているそうだ.「ネガティブコメントは?」と聞いたところ「正直しょげる」という素直な感想をいただいた.こういった件数などはユーザから見える場所にも出してもいいのではと思うのだが,「どのSBMサービスのを出すべきか」という(ありがちな) 問題があるそうだ.

現担当者の北條さんが「[情報管理web]などはライバル」と話してくれたのも面白かった.

ついつい忘れてしまいそうになるが,カレントアウェアネスポータルに限らずwebサービスは中で人間が運営している.ブックマークのコメントひとつで支えられるものがあるなら努力したいと思った.

Deweyがくれたもの

発表の最後は「すべてはこの記事から始まった…」として「[有名な図書館猫、死す]」という話で締めくくられた.正直かっこよかった.

この有名すぎるエントリを上山さんが執筆したと聞いてとても驚いてしまった.そもそもは通勤電車で他の人が読んでいた新聞の記事を目にして投稿したそうだ.このニュースが注目を集め,「[E574 - 図書館ネコ「デューイ」,その生涯を終える]」になり,2009年1月22日には「奇跡体験!アンビリーバボー」でDeweyが紹介された結果アクセスが殺到してカレントアウェアネスポータルがダウンしてしまった.この話は第3回ARGカフェで村上浩介さんが紹介している.(村上浩介, テレビからネットへ, http://current.ndl.go.jp/files/presentation/20090221.pdf)

また,恥ずかしながらカレントアウェアネスポータルの[ロゴ画像]の猫がDeweyだったということも今まで気づいていなかった.あるときこの猫を削除したら「どこへいったんですか?」と反応があったためそのままにしてあるそうだ.NIIのプワンちゃんといい,猫だらけである.

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